12月31日年末感謝礼拝メッセージ

   -待降節によせる主の祈り-Ⅵ

 「頌栄」

聖書:マタイの福音書6章9-13節(新p10)

メッセンジャー:高江洲伸子師

さて、クリスマスも過ぎて、今日は年末感謝礼拝を迎えました。「待降節によせる主の祈り」は今日で最終になります。-国と力と栄えとは 限りなくなんじのものなればなり-、主の祈りのさいごの一文ですが、このことばは聖書には記載されていません。東方の教会からこの頌栄部分が加えられるようになったと言われていて、司祭が聖餐式で主の祈りを唱えた後、「国と力と栄えとは 限りなくなんじのものなればなり」と唱えると、会衆が、「アーメン」と応答していたと言われています。最終的には西方教会にも及んでいき、現在に至っています。

ヨハネの福音書1章は、「ことばは人となって、私たちの間に住まわれた。私たちはこの方の栄光を見た。父のみもとから来られたひとり子としての栄光である。この方は恵みとまことに満ちておられた。」(ヨハネ1:14)と書かれています。ここに書かれている栄光は、恵みとまことによるもので、人間の力による栄光とはとても比較もできません。クリスマスに家畜小屋で誕生した赤ちゃんを通して顕された神の栄光は、絶大な人間の力で築きあげた帝国をも転覆させることができるほどのもので、人間が到底推し量ることのできない不思議な力なのです。

マタイの福音書の2章には、ユダヤの宮殿にいたヘロデのもとに、異国の博士たちが「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか。」(2) と言って訪ねてきた時、「ヘロデ王は動揺した。」(3)と書かれていますが、その動揺は尋常ではありませんでした。ユダのベツレヘムからユダを治める者がでるという、ことを聞いたヘロデ王はじっとしておれず、「ベツレヘムとその周辺一帯の2歳以下の男の子をみな殺させた。」(16)のです。御子の誕生の御告げをきいた羊飼いが飼い葉桶のキリストを捜しあて礼拝した様と何という違いでしょうか。自分の権力の座が脅かされることに対して、彼は神の御業をも自分の力で押し止めようとするほど、自分の権勢を脅かす存在を黙ってみておれなかったのです。(多かれ少なかれ、肉で生きている私たちの中にもそれは渦巻いているものですが、)けれど、ヘロデの肉の策は神の配慮で全てが無駄足となりヨセフ一家は、エジプト経由でナザレに落ち着き、そこで30歳からの宣教に備える日々が続きます。神様はご自身のみ旨の現実の為に、必要に応じて肉の業を退け、栄光を現わし続けてくださいます。
使徒行伝では、宣教に励むペテロがヘロデに捉えられ、投獄された記事が書かれています(12:3-11)。「ペテロは二本の鎖につながれて、二人の兵士の間で眠っていた。戸口では番兵たちが牢を監視していた」(6)。ところが、そこに主の使いが現われ、「ペテロの脇腹を突いて彼を起こし、『急いで立ち上がりなさい』と言った。すると、鎖が彼の手から外れ落ちた。」(7)。続いて、全ての厳しい監視の目をも通り抜けさせ、堂々と彼を獄から解放してゆく様が描かれています。
 国と力と栄えとは 限りなく続くのです。神様ご自身の手によって守られ、堅くされ、ついには巨大なローマ帝国でさえ国教として受け入れてゆくほどに。けれど、人間の力で造られた王国はどんなに栄華を極めていても、やがて、没してゆきます。

 頌栄のもととなった言葉は、歴代誌第一29章11節のダビデの決断の祈りの最初の讃美にあります。「主よ、偉大さ、力、輝き、威厳はあなたのものです。天にあるものも地にあるものもすべて、主よ、王国もあなたのものです。あなたは、すべてのものの上に、かしらとしてあがめられるべきお方です」。また、詩編145篇11-13節にも見ることができます。「彼らはあなたの王国の栄光を告げ あなたの大能のわざを語ります。こうして人の子らに 主の大能のわざと 主の王国の輝かしい栄光を知らせます。あなたの王国は 永遠にわたる王国。あなたの統治は 代々限りなく続きます」。これらの聖句はユダヤ教祈祷の伝統を通して主の祈りに引き継がれてきています。とくに、「国」「力」「栄」という三語が旧約聖書を貫いたイスラエルの信仰に深いつながりがあることは否めません。けれど、「国」も「力」も「栄」も失われたイスラエルの人たちにとって、この頌栄の部分となった祈祷のことばがどんなに深い思いをもって唱えられてきたことでしょうか。
 けれど、今、私たちは、ダビデの王国の復活ではなく、馬小屋で生まれられた王なる祭司御子イエス・キリストを通して与えられた真の御国を継ぐ民として、新しい天と地を待ち望み、高らかに、国と力と栄えとは 限りなくなんじのものなればなりと、と唱和するのです。このことばは私たちの讃美であり、信仰告白なのです。
 参考図書N.T.ライト著「イエスと主の祈り」関田寛雄著「十戒・主の祈り」

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次