3月20日 礼拝メッセージ

受難節-葬りの為に-「ナルドの香油」 

聖書:マルコの福音書14章1-9節 

メッセンジャー:高江洲伸子牧師

「ナルドの香油」は受難節に世界中の教会で語られる聖書箇所の一つです。それは、この出来事が、「過越しの祭り」すなわちイエス様が十字架に掛かられる数日前に起こった事だったからです。場所は、ベタニアのシモンの家。イエス様にツァラアトという大変な病気を癒してもらったシモンが、イエス様とお弟子たちを食事にお招きしていたのでしょう。その食事の席に、突然一人の女性が入って来て、高価なナルドの香油をイエス様の頭に注ぎかけたのです。どんなに、そこにいた人たちは驚いたことでしょうか。香高いナルドの香油の香が部屋一杯に広がってゆく中で、同席していた弟子の中には、その行為を、必ずしも良く思わない人たちもいたのです。
 ルカの福音書の記事との比較
実は、ルカの福音書7章にもこれとよく似た話が出てきます。ここでも、一人の女性が香油の入った壺を持ってきて、泣きながらイエス様の足を涙で濡らし、髪の毛でぬぐい、香油をぬった様子が描かれています。良く似た記事ですが、実は違う別の出来事なのです。
マルコの記事は、十字架を前にしたエルサレム近郊のベタニアでの出来事ですが、ルカの福音書の記事は、イエス様がまだガリラヤ地方で伝道していた頃の話です。イエス様は同じような出来事を2度経験されたようです。
ルカの書いたその女性は、「一人の罪深い女」と書かれていますが、イエス様はこの女性の行為に対しては、「この人は多くの罪を赦されています。彼女は多く愛したのですから。赦されることの少ない者は、愛することも少ないのです」(ルカ7:47)と、言われていることに対して、マルコの書いている女性には、「彼女は、自分にできることをしたのです。埋葬に備えて、わたしのからだに、前もって香油を塗ってくれました。」(マルコ14:8)と言われています。ここから、明らかにこの二人は違う人物で、違った動機で香油をささげていることがわかってきます。2人とも純粋にイエス様を愛して香油をおささげしましたが、一人は罪赦されたことへの感謝が溢れ、一人は主イエスの葬りの為の備えものとされました。私たちの奉仕やささげものの意味をイエス様は、重くしっかりと受け止めていて下さることがわかります。
神の時に敵った信仰のささげもの
ヨハネの12章では、マルコの記事と同様の出来事が書かれていますが、ここでイエス様が「マリアは、わたしの葬りの日のために、それを取っておいたのです。」(マルコ12:7)と言われているところから、この時、香油をささげたマリアの動機は、兄弟ラザロの蘇りに対する深い感謝が込められていただろうとも考えられます。その事も含めて、主をこよなく愛するマリアのささげものは、十字架の死へ向かわれるイエス様へ、時にかなった信仰のささげものであったことが、段々とわかってきます。
 ところが、このマリアの信仰のそなえものに対して、非常に批判的に捕らえた人たちがいました。「すると、何人かの者が憤慨して互いに言った。『何のために、香油をこんなに無駄にしたのか。この香油なら、三百デナリ以上に売れて、貧しい人たちに施しができたのに。』そして、彼女を厳しく責めた。」(マルコ14:4,5)とマルコは書いています。
 ヨハネの福音書では、「弟子の一人で、イエスを裏切ろうとしていたイスカリオテのユダが言った。」(12:4)と、ここでも名前が明記されています。さらには、「彼がこう言ったのは、貧しい人々のことを心にかけていたからではなく、彼が盗人で、金入れを預かりながら、そこに入っているものを盗んでいたからであった。」(12:6)と、ユダの深層部が詳細に書かれているのです。
 愛からか、欲からか
振り返ってみれば、イエス様がお誕生されたときには、はるばる外国からキリストを訪ねてきた博士たちが宝の箱を開けておささげものをしました。彼らの贈り物は、やがてヘロデの虐殺を恐れて逃れたエジプトでの生活費とされました。博士たちのささげ物もまた、時に適ったものでした。十字架を前にしたイエス・キリストに対しても天の父はマリヤを通して、最適な供えものを用意されたのでした。
博士たちは遥々外国から、当時であれば、命の保証のない長旅をして贈り物を届け、マリアは彼女が持っているものの中で純粋で最も良いものをキリストにささげたのです。それは、まさに純粋にキリストを慕う心情を現わすものでした。彼女の行為に対して様々な不満が行き交う中で、イエス・キリストは、「世界中どこでも、福音が宣べ伝えられるところでは、この人がしたことも、この人の記念として語られます。」(マルコ14:9)と語られました。
2000年を経た今も、マリアのしたこのことは、新鮮に私たち一人一人に語りかけます。「その動機は愛からか、欲からか」と。

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