「博士たちのクリスマス」
聖書:マタイの福音書2章 1-12節
メッセンジャー:高江洲伸子牧師
クリスマス、私たちはプレゼントをしたり、もらったりします。どうしてでしょう。それは、御子イエス様のお誕生日をお祝いして、みんなで喜びを分け合って、プレゼント交換したりするんですね。では、世界で最初にイエス様にプレゼントを届けた人は誰でしょう。それは、遠い外国から遥々ユダヤのベツレヘムの田舎まで旅をして、イエス様を訪ねて来た博士たちでした。
1.イエス様を尋ねて来た博士たち
新共同訳聖書には、「占星術の学者たちが東の方からエルサレムに来て、」(1)と訳され、ギリシャ語原典は「マゴイ」と言う言葉が使われています。それゆえ、彼らは天文学者でもあり、占星術師でもあっただろうと言われています。
民数記24:17に、「ヤコブから一つの星が進み出る。」と書かれていますが、星を調べていた博士たちは、ある日、新しい星の出現に出会います。この星は、古くから言い伝えられている「ユダヤに新しい王が生まれる時、新しい星が現れる」といわれているその星に違いないと、確信を抱いて博士たちは、新王誕生のお祝いの品をもって、エルサレムの宮殿に向かって出発したのでした。
ところが、エルサレムの宮殿に赤ちゃん誕生の兆しはなく、それは「ユダヤのベツレヘム」(ミカ5:2)であると知らされて、博士たちが宮殿を出ると、そこに最初に見た「あの星が」、「彼らの先に立って進み、ついに幼子のいるところまで来て、その上にとどまった。」(9)とマタイは記しています。
そして、遂にイエス様にお会いすることができた博士たちは、大切に外国から持ってきたプレゼントを、イエス様にお渡しいたします。これが、世界で最初のクリスマスプレゼントだったのです。彼らは、「宝の箱を開けて、用意してきていた黄金、乳香、没薬を贈り物として献げた。」(11)のです。
「黄金」は王位の象徴、「乳香」は祈りの象徴です。どちらも礼拝に使われる高価な香料です。「没薬」は、死者の死体に防腐剤として塗られるものです。全世界の王とし、また、祈りの祭司として執り成し、すべての罪を負い「神の子」として死ぬ為にこの世に生まれて下さった、御子のお誕生をお祝いするには一番ふさわしい献げものでした。何か月、あるいは何年かかるか分からない長旅をして、博士たちは、命がけで御子にお会いし、礼拝し、贈り物を届けたのです。
2.ヘロデの世界
さて、驚いたのはヘロデです。「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか」(2)。この一言は、半分異邦人の血が混ざっているヘロデ王には、天地がひっくりかえるような不安を抱かせる言葉でもあったのです。「これを聞いてヘロデは動揺した、エルサレム中の人々も王と同じであった」(3)。 王の祭司たちは、すぐにミカ書5:2を引用していますから、彼らはメシア到来の預言を知っていたのです。けれども、祭司、律法学者は神につく事無く、ヘロデの世界で生きている人たちだったのです。彼らにとってのメシアは、ヘロデ以上の存在ではなかったのです。ヘロデは更にしたたかに博士たちに伝えます。「行って幼子について詳しく調べ、見つけたら知らせてもらいたい。私も行って拝むから」と言って、博士たちを送りだすヘロデの本音は、キリストを礼拝する為ではなく、自分の立場を脅かす存在を消すことにありました。やがてベツレヘムにいる二歳以下の男の子全員諸共キリストを消滅させる為に惨殺されたのです。
3.神の守りと導きの確かさ
宮殿を出た博士たちを星は導き、キリストへ出合わせました。御子を礼拝した後、夢で「ヘロデのところへ戻らないように」(12)との警告を受けた博士たちは違った道から故郷へ帰って行き、彼らの命も守られました。再び天使はヨセフに、「立って幼子とその母を連れてエジプトへ逃げなさい」(13)と告げます。御子キリストとヨセフ夫妻の命が守られただけでなく、博士たちのプレゼントは避難先のエジプトでの生活費となりました。この事は、神様は神を愛する者たちと共に働いて、万事を益になるようにしてくださる方(ロマ8:28)であることをはっきりと確信させます。終始一貫彼らを導いたのは不思議な星の存在でした。
「その星を見て彼らはこの上もなく喜んだ」(10)。私たちは今、博士たちを導いた星を見ることはありませんが、星より勝ってご聖霊は、御子を訪ね求める者に、ピッタリと寄り添って、私たちのゆく道の光となりキリストを照らし出します。そして、確かな神の導きのある所には、困難はあっても喜びと平安が付いてきて、払う犠牲の大きさに比例するかのように、暗闇で星は一層輝き、神の恵みと喜びもまた、増してゆくことを、命をかけて御子を訪ねた博士たちの礼拝を通して、今、私たちは知るのです。